綱坂

わたなべの綱。
その坂道をのぼりながらかんがえた。
男の子にはみんな、綱をつける。
そういう家もあるだろうな。
妻のところがそう。
名前にみんな綱がついている。
つながって。
死んでいくのさ。
三井倶楽部の裏を通って。
切り落とされた鬼の片手の話は。
べつの日にしよう。
わたしも妻も。切りはなされて、
しめった四月の綱をもつ。