少年兵 2020年3月29日増殖する小詩集tsuzura 誰がなんと言おうと (声をあげたくなる時ってある) 俺は 少年兵になる 私の父はそのとき小間物の 修繕をして暮らしていた 酒が呑みたかったに違いない くだらねえ それは子どもが兵士になることか それとも自分の仕事のことか 今となってはわからない 私も死んですでに十年になる
ジンダイアケボノ 2020年3月28日増殖する小詩集tsuzura ちかごろ耳をかえた と風にきいたが お元気か わたしはもう話さないから 意思はいらない あそこで咲いているのは ジンダイアケボノ 舌をぬかれ 鼻も利かないらしい わたしは微妙にうごかされている 耳から べつなひとの血へと分け入っていく
秋雨 2020年3月23日増殖する小詩集tsuzura 泰淳が 泣きそうになりながら 秋瑾伝の終わりを書いている ふん と思って彼女の眼に入らなかった 地味な周兄弟 (どう思いますか) 悪も正もいいきらない 濡れてすべる問いかけはずるい 落水狗 水のなかで犬が泣く 悪い犬を打ちながら泰淳も泣く 世界は どうしたらいい と