「巡景詩篇」カテゴリーアーカイブ

函館の鶏




この子と。わたしたちはいる。
ハッピーピエロの店内で。
(左右から海がやってくる。)
この障害の子と。
先に死んでしまう夫婦が。
ものに食らいついている。
わたしたちはいる。
外側から。
そのことを妻と眺めている。
(清潔で簡単納骨墓石。)
死んでばらばらにされた鶏のこと。
親や子ががそうだったらどうしよう。
もたられされた極楽オムライス。
啄木一家もずっとそこで死んでいた。
ここは寒いからな。

海峡通り



しぼられているところ。
ひとびとはみんな目を病んでいた。
(七人の眼科医が。)
辻々にひかえている。
海にやられた。山にやられたぞ、と。
星のかたちをした小さな陣地で。
あおむけに空をみている。
(昔みていた。)
隣では、ハンバーガーと
オムライスをたべている巨漢。
いずれ確実に眼が、眼が。
とそのひとは叫ぶだろうな。
十字路に視野が。
しぼられているところ。
市電は片側だけで消えている。

鶴見

洗わねばならない。
獅子ヶ谷にむかって。
(中世の悪党。)
バスの影とともに全身は糞にまみれた。
自由。狼藉。
ひとびとは金髪を揺らし。
少し北寄りに集まってくる。
(こんなところにも。)
大きなショッピングセンターがあるんだね。
わたしと妻は鶴見にいた。
老いの悪党。
生きながらえたまま、
急いでそこを飛び立とうとする。