首都高の思い出

アパートのみんなは
夜になると
高速道路をつくりにでかけた

あの晩
隣部屋の兄さんは
工事中にはねられてしまった

それで今も死んだスピッツ犬のように
吠えている

道路をつくることと
夜になることは
いつからすり替わったか

うるさくて
勉強もできない

(あの犬でないものが)

春の私鉄



でんしゃにのって
うつっていきます

あの顔になり
この顔になり

つりかわはさわりません
うつむくこともしません

この顔とあの顔が
二枚ともくずれていく鉄橋をわたり

ひとびとをていねいに
振り落としていきます

靴をなくす夢を
一生うつしていくんです

ゆられて




ひとをせおってたおれたのです
(額から血が)

家の鏡をみたら
わたしが傷ついている

泣きだしたのにそれは
この世のひとではない

ああ あのときゆれていたのか
昨日が二人にも三人にもなる

うしろのきみはだれ

ゆびをさしてわらっているが
それはとてもふるくて根もとがない