月別アーカイブ: 2016年6月

西柴のおわり

猫が。落ちた。
そのものは死なない。合一。
わたしの目がしらが暗くなった。
堀口の坂を。
(サウロは地面から起き上がって。)
目をあけたが。
何もみえなかった。
のぼりきれば。
いもしない闇の妻がみえるだろうか。
猫が。落ちて。
ふるいことばをくわえた。
そしてすぐに捨てる。合一。
なつかしさは何も伝わってこない。

八王子

そんなに遠くまではいかない。
運ばれていく身。
うつろであったろう。
横浜ではうまくもないそばをたべ。
わたしらは歩いた。
みずからを絹糸のように運んだのだ。
帷子川が泣いている。
だれも泣いていないのは知っているのに。
(八王子までもつかな。)
うしろから妻を、おおうように抱くと。
わたしらは消える。
川の音に。さらわれて、
祭礼の牛車になったのだ。
明日も。この路はうつろであるだろう。