「巡景詩篇」カテゴリーアーカイブ

神楽坂

つぎつぎと死んでいく。
(ようにみえる。)
用もないのに、この坂を。
逝ったり来たりしたものだが、酔狂な。
おいしいお鮨たべませんか。
坂上をはるかに飛び。
喜捨の気もちのある方だけでかまいません。
いっしょに。荒んで。
ついでに護国寺までいきましょうや。
決断するそばから、
つぎつぎと子が生まれてしまう、無人区。
うしろ向きのひと。
みんな石の顔している。
あ、といった口がかたまっているから。
一生わらえないんだよね。

竹橋

だが。
竹でできているものは何ひとつない。
どこを渡らされたのか。
小さく。うすい字で何かが。
わからないように展示された館内。
黒いスカートの、
おどろくほどふとい足が。
どこにもないなよ竹をのぞいている。
(ふといな、おどろくほど。)
じじいが白く。
おどって、美術のなかでほろびているわ。
竹を割ったような。
(となりの二本足。)
そういう亡魂のおまえだ。
水はわたしたちのすぐ近くにある。
おどろけ。

西柴のおわり

猫が。落ちた。
そのものは死なない。合一。
わたしの目がしらが暗くなった。
堀口の坂を。
(サウロは地面から起き上がって。)
目をあけたが。
何もみえなかった。
のぼりきれば。
いもしない闇の妻がみえるだろうか。
猫が。落ちて。
ふるいことばをくわえた。
そしてすぐに捨てる。合一。
なつかしさは何も伝わってこない。