秋瑾





秋瑾は日本の短刀がすきだった
なぜだろう

武田泰淳は秋瑾をこわがっている
わけがわからない、と

どうしてそんなに死にたいのか

今日はそこまで読んでやめた
『秋風秋雨人を愁殺す』

武田泰淳の文はさびしいのに読みにくい
なぜだろう

大学





大学生がひとびとに追われて逃げていく

わたしは燃えながら
八景食堂で酒を舐めていた

十八歳になったばかりのころ
背中には他人のなまえが書いてあり

脂の浮いた海が
ふかくここまで入ってきていた

大学生はひとびとに炙られ
皿の魚もこれから燃えていくところであった

追浜車庫行き





しまわれていくために
急いで歩く
深く世界から隠された
パン工場のことをしっている
ひとはある朝
熱がでて甘くひろがっていく
あの総合病院のさきには
二本足のバス亭があった
「きみをしまって
早くにせのバスを
出してもらえないか」
棒読みする老人
鉄のように溶けていく町