月別アーカイブ: 2016年4月

綱の手引坂

綱坂のちかく。
手を引かれて。綱が。
(のぼる、くだる。)どっちかな。
曇って少し。寒い景色で、
手がひかる。
片手のひかり。
それだけで。こちらへと。
引くこともできる。
わたなべの綱。
死んだやつのおもいでだもの。
しらないひとの。

続・ブッフェの世界

またくった。くいながら、
とちゅうで出したのだ。
引っ越ししたばかりの長男が来て。
さあ。みなさん、好きなだけくってください、
という店で。いちれつになって。
くわれるべきものを。
(どうせあしたには出すんだが。)
みんな向うむきで。
くそにするつもりでくったのだ。
病室のおまるに坐りながら。
母親も。向うむきでだしていたな。
それをおもいながら。
またくった。殺意をもって。
くいつづけていたのさ。

綱坂

わたなべの綱。
その坂道をのぼりながらかんがえた。
男の子にはみんな、綱をつける。
そういう家もあるだろうな。
妻のところがそう。
名前にみんな綱がついている。
つながって。
死んでいくのさ。
三井倶楽部の裏を通って。
切り落とされた鬼の片手の話は。
べつの日にしよう。
わたしも妻も。切りはなされて、
しめった四月の綱をもつ。