綱坂のちかく。
手を引かれて。綱が。
(のぼる、くだる。)どっちかな。
曇って少し。寒い景色で、
手がひかる。
片手のひかり。
それだけで。こちらへと。
引くこともできる。
わたなべの綱。
死んだやつのおもいでだもの。
しらないひとの。
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続・ブッフェの世界
またくった。くいながら、
とちゅうで出したのだ。
引っ越ししたばかりの長男が来て。
さあ。みなさん、好きなだけくってください、
という店で。いちれつになって。
くわれるべきものを。
(どうせあしたには出すんだが。)
みんな向うむきで。
くそにするつもりでくったのだ。
病室のおまるに坐りながら。
母親も。向うむきでだしていたな。
それをおもいながら。
またくった。殺意をもって。
くいつづけていたのさ。
綱坂
わたなべの綱。
その坂道をのぼりながらかんがえた。
男の子にはみんな、綱をつける。
そういう家もあるだろうな。
妻のところがそう。
名前にみんな綱がついている。
つながって。
死んでいくのさ。
三井倶楽部の裏を通って。
切り落とされた鬼の片手の話は。
べつの日にしよう。
わたしも妻も。切りはなされて、
しめった四月の綱をもつ。