月別アーカイブ: 2016年3月

お持ち帰りできます

なにが。
きみもわたしも手ぶら。記憶もない。
通りのむこうには。
旅館、一石荘。
石がころがってきて泊まり、
石のように眠る。
確かにいまはそうだが。大丈夫。
お持ち帰りできますよ。
(なにが。)
声だけで、営業しているひと。
きみが生きものなのかどうかも。
わたしは石だからわからない。

インドのとなり

もう三十年もまえに京都でみた。
(夢かもしれない。)
京都のとなり。
いつもとなりばかりにいたな。
少しも横をみないで。
ひたすらに喰った。インドの横で。
三十代の足。顔。風景。
この世では、となりだけが。
ほんもののよう。
そのかんがえも、われらの。
すぐちかくから来る、
インドカレーの声なのだが。

庚申塚

 

ねむらずに話そうぜ。
ようやく、おれたちはここまで来た。
骨になってもしゃべろうぜ。
といっても。高速道路の下まで。
生きて、死ぬまでかな。
まあみんなそうなんだけど。
女房が追っかけてきた。
夜中じゅうしゃべったな。
ごまかして話をかえた。そんなことより。
ニトリで椅子を買おうじゃないか。
白骨化しても似合うやつ。
こわかった、あんときは。
家を出る長男もいっしょで。
西日が。戦争のように。
しつこくわれらをつらぬいた。のさ。