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とりあえず愚痴

 黒田三郎の全詩集で、面白かったのは十七歳の頃に書いた詩。作品そのものはそれほど面白くないが、「VOU」に参加していた黒田がバリバリのモダニズム詩を書いているのが面白い。「荒地」の人たちも大体似た ようなものを書いていたんだろうと思う。『山中散生全詩集』もあらかた読んだが、こちらのシュール風の詩もやっぱりそんなに面白くない。
 ついでにずっとほったらかしてた中野嘉一の『モダニズム詩の時代』を読み始める。ずいぶん 前に古本屋で買ったもの。引用で出てくるモダニズム詩は、今書かれたものと言われても不思議でない。それはこの当時の詩が新しかった、というより、今でも誰かがやってそうなスタイル、ということである。詩自体はあまり面白くない。
 当時「リアン」という雑誌があって、シュールとマルクス主義を弁証法的に止揚するとかいう目的で出されたものがあったらしい。その同人が長野の喫茶店で集まった、というので官憲に逮捕されている。後に保釈された同人の罪状の書類が引用されていた。実際の作品も引用されているが、これで大衆が厭戦気分や階級感情に目覚めるとも思えない。発禁にならなくても、恐らく大して大衆には読まれないだろう、という感じである。こんなものまで取り締まってたんだ、と思う。どうせ取り締まるなら、岡崎清一郎のあのへんな饒舌詩の方がよい、という気がする(岡崎が当時、詩をどれだけ発表していたかは知らないが)。
 こういったモダニズムの作品を散見すると、西脇や村野がどれだけうまくて、読むに耐える詩だったか、というのがよく分かる。